相続、合併、会社分割など、一般承継で株式を移転する場合、譲渡制限株式だとしても株式の移動を制限することはできません。
そうなると相続や合併などで、会社にとっては都合の悪い人が株式を取得した場合でも、会社はそれを受入れるしかなくなるのかという問題が出てきます。
このような問題を解決できるような制度として設けられている「株式売渡請求」について理解しておくようにしましょう。
株式売渡請求とは?
会社法により相続などで株式取得した人には、株式を会社に売り渡すことを請求できる相続人などに対する制度が「株式売渡請求」です。
相続人等に対して行う売渡請求は、相続、合併、会社分割など、一般承継があった事実を知った日から1年以内と期限が定められており、株主総会の特別決議を経て行う必要があります。
ただし1年を過ぎてしまうと売渡請求することは出来なくなるので注意しましょう。
協議不成立の場合は申し立てが必要
売渡請求による売買価格は、原則、会社と、株式を所有している人で協議を行い決めることになります。
協議が成立しなかった場合には、売渡請求日から20日以内に裁判所に売買価格の決定の申し立てを行うことが可能です。
申し立てを行わなかった場合には、売渡請求は効力を失うので注意しましょう。
株式売渡請求はこのように活用する
会社の譲渡制限株式を持つ株主が亡くなり、株主の相続人が株式を相続したものの、相続人が会社にとって好ましい人物ではなかったとします。経営を安定させるために、株式の譲渡を制限したくても相続では制限ができません。
この場合、相続人は参加できない株主総会の特別決議で、相続人等に対する株式売渡請求を可能とする旨を定款で定めれば、対象株式数および買取価格を相続人と協議することができます。
そうすることで相続人に株式を継続保有させずに、対象となる株式を取得することができるでしょう。
後継者が相続人だったら?
株式売渡請求は会社に好ましくない相手が株式を保有する場合に有効な制度ですが、仮に亡くなった株主が先代経営者で相続人が後継者だった場合はどうでしょう。
売渡請求についての株主総会特別決議に後継者が議決権を行使することができないので、少数株主による会社の乗っ取りが行われる可能性が出てきてしまいます。
そのため先代経営者の株式は事前に他の会社に移転すること、先代経営者の株式譲渡制限をあらかじめ外すといった策を講じておくことも必要だと言えるでしょう。
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